国宝 ― 2025/06/15 23:23
□国宝(李相日監督 2025)
一言で言えば歌舞伎の映画、絢爛豪華な女形の芝居がスクリーン全面に展開される。主演は隣の便所を借りた吉沢亮さん、相当な費用が掛かったと思われる大作なだけに、もし起訴されていたら偉い騒ぎになっていたであろう。共演の横浜流星ともども吹き替えなしの踊りは見事であった。
歌舞伎の制作と興行は「松竹」の専売であるが、この映画の配給は「東宝」であった。「松竹」の本作への関わり方に興味がつのる。

我孫子アート ― 2025/05/19 16:17
□我孫子アートな散歩市
我孫子市のアートイベントの一環として、島田忠幸さんのアルミ彫刻が手賀公園の「アビスタ」に飾ってあった。

相国寺展、西洋絵画展 ― 2025/05/16 20:33
□展覧会二連荘
「相国寺展@芸大美術館」と「西洋絵画、どこから見るか?@国立西洋美術館」と、2つの展覧会を上野で続けざまに観て来た。
相国寺展の目玉は、若冲の可愛い虎の絵、西洋絵画展の目玉は、サンディエゴ博物館から持ってきたスペインの静物画(ボデゴン)だ。ボデゴンは実に不思議な絵で、並べられたオブジェの影がバラバラなのだ。総じて西洋画は、聖書の絵解き(イラスト)から始まったということが良く分かった。
それにしても一日に二連荘で見ると、日本美術に対する、西洋美術というか油絵の艶やかさとアクの強さが改めて印象に残った。




立川駅北口 ― 2025/05/13 20:30
□すごくお洒落な街並
今回、多摩動物公園をゆったり見たかったので、立川駅北口に一泊したのだが、再開発されたGREEN SPRINGSという街区がとてもお洒落なので驚いた。柏は勿論、評判の二子玉川より洗練されているのではないか。
様々なレストランやショップが軒を並べ、パブリックアートが設置され、美術館まであるのだ。モノレール沿線に大学が多いせいか、行きかう人々も若々しい。コロナ直前に竣工した地元主導の再開発が成功しているようだ。
柏もそごう跡地を中心に再開発を進める計画だが、立川も参考にしてほしい。







江戸絵画お絵描き教室 ― 2025/05/01 23:25
□江戸絵画お絵描き教室(府中市美術館 2023)
日本では、伝統的に、古典や名画を模写することが絵を学ぶ第一歩だった。かの「北斎漫画」も絵師たちへのお手本だった。しかし、近代化の過程で、写生と個性の発揮を重んじるあまり、模写の伝統は廃れていった。
しかし考えてみれば、模写を通じて先達の物の見方や描写の技術を学ぶことは、西洋においても多くの画家がしているように、効率的な学習法の一つである。その伝統を再生すべく、若冲や応挙らの傑作を手本に、写しかたを豊富な図版で解説した模写入門本。
普通にお絵描き本としても、とても良く出来ている。この本の通りにするとすぐに応挙のように描けそうな気さえしてくる(無論無理である)。小動物の描き方がよく出ているので年賀状を考える時にも便利そうだ。

柏のお城 ― 2025/04/29 19:17
□バッハが愛した“クラヴィコード”の魅力(鴨川華子 演奏)
個人が所有する柏の「コーマル城」で、あまり聴く機会のないクラヴィコードのミニコンサートを楽しんだ。自宅を欧州のお城に仕上げた「城主」の説明を聞きながら、バッハやハイドン、モーツアルトの曲を聴いた。クラヴィコードにも、演奏後、少しだけ触れさせて貰えたのでゴジラのテーマを叩いた。
気になる「コーマル城」の名前の由来は、城主が「高丸」氏だからであった。


ヒルマ展 ― 2025/04/27 20:06
□ヒルマ・アフ・クリント展
久しぶりに竹橋の美術館に行った。ヒルマ・アフ・クリントは、全く知らない女流画家だったが、植物画などを描いていたのが、降霊会を契機に神秘的な絵を描き始めたと言う。長らく評価されていなかったが、近年、モンドリアンなどに先駆ける抽象画の創始者として再評価され、グッゲンハイム美術館で回顧展(2018)が開かれた。
展覧会では、代表作「神殿のための絵画」シリーズを中心に、大画面でスピリチュアルな抽象画が回廊を飾るように展示され、何故か花鳥風月を描いた日本の障壁画のようにも、伽藍を埋め尽くす曼陀羅のようにも見えた。
観客に、ファッショナブルな若い女性の割合が高いので驚いた。



僕の音楽人生 ― 2025/04/09 20:00
□僕の音楽人生 エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史(服部良一 1993)
笠置シヅ子の「東京ブギウギ(1947)」など、一連のヒット曲の作曲者として知られる昭和歌謡界の巨匠 服部良一の自伝。副題の「和製ジャズ・ソング史」にあるように、昭和の歌謡曲とは実は和製ジャズ・ソングだったことが読むと良くわかる。
今を時めくJPOPも、浪曲の流れを汲む古賀メロディーと、服部に代表される和製ジャズ・ソングの相克と切磋琢磨がルーツだった訳である。もともとお里がジャズだから、坂本 九の「上を浮いて歩こう(中村八大作曲1961)」は、アメリカでも大ヒットした訳だと妙に納得した。

オーケストラの日 ― 2025/03/31 19:18
□クラッシック音楽のデギュスタシオン?
3月31日は「ミミにいちばん!」のオーケストラの日だそうだ、知らんかった。
そのオーケストラの日の特別公演として開かれた、首都圏13楽団から選別された団員と二期会オペラ歌手による祝祭管弦楽団コンサートを聴いた。
フルオーケストラにしては三千円と格安チケットなのであまり期待していなかったが、一階前列の良い席が取れたこともあって、素晴らしいオペラのさわりとベートヴェンの交響曲が楽しめた。いつもは金が無いので天井桟敷みたいなところで聴いているのだが、やっぱり舞台に近い席は音が良いと感激した。
オケも素晴らしかったが、テノールの城 宏憲氏もまた声が素晴らしく、思わず帰りに「さまよえるオランダ人/二期会」のチケットを予約してしまった。
安い見料で味見(デギュスタシオン)をさせて、その後通常公演のチケットに誘導するという、クラシック業界の手練手管に思わず乗ってしまったようだ。

コクトー、1936年 ― 2025/03/14 12:10
□コクトー、1936年の日本を歩く(西川正也 2004)
ヴェルヌの80日間世界一周を地で行く「私の80日間世界一周(1936)」を敢行したフランスの詩人ジャン・コクトーの、日本での7日間に焦点を当てた一冊。以前に、ポルトガル人作家が大戦前夜に敢行した、「世界周遊記」の日本滞在部分を読んだが、戦前の日本の状況を外国人が見た紀行として共通するものを感じた。
ともに、日本の伝統文化や美意識を賞賛しつつも、帝国主義化を進める日本について、不安と懸念を示している。コクトーの方は日中戦争以前の来日なので、それほど明確ではないが。
コクトーの来日は、奇しくも喜劇王チャップリンの来日と同時だった。巴里の盟友、藤田嗣二や仏文学者堀口大學の案内で相撲、歌舞伎を楽しむとともに、日本の若い芸術家とも交流している。フランスでもまだ大家とは看做されていなかったコクトーであるが、すでに画家東郷青児の訳による「おそるべき子供たち(1930訳)」により日本での人気は高く、高名な文学者として各地で歓待された。
詩人も大衆も、芸術を介在として楽しく交流していた筈だったのに、1941年、真珠湾攻撃により、日本人は、コクトーやチャップリンの故国と戦争を始めるのであった。

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