ジャポニズムの完成形
2018-07-24


藤田嗣治とは誰か―作品と手紙から読み解く美の闘争史(竹内みどり 2015)

 言わずと知れた、エコールドパリの一員と唯一認められた日本人(後にフランス人)画家、藤田嗣治の伝記。藤田嗣治は、サムライの末裔であったとは知らなかった。尤も、長谷川等伯も武士であったので、あまり驚くことではないか。
 著者の意見では、美術史的に見て、藤田とは、浮世絵を媒体にしたジャポニズムのヨーロッパ絵画への導入と受容(ゴッホ、ゴーギャン等への影響と拡散)の最終章を身をもって描き終えた画家ということになる。なるほど、そういう解釈もあり得るんだと納得。あと、晩年の礼拝堂の建設と自らの埋葬は、詩人コクトーを追っているのではないかとの指摘も、僕には新しかった。
 それにしても、藤田の面相筆の線の美しさよ。
 残念ながら藤田の作品はルーブルにも、印象派以降の作品を引き継いだオルセーにも収蔵されていないが、フランス国立近代美術館とパリ市立近代美術館に収蔵されているから、欧州の絵画史に組み込まれたといって良いであろう。
 実は、同時代のピカソの作品も、ルーブルにもオルセーにも入っていないが、こちらは、フランス政府が相続税代わりに遺族から作品を物納させて、パリ国立ピカソ美術館という立派なのを造ったので、別格である。

[芸術]
[読書]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット